The Magic Whip / ブラー
香港旅行をして、深夜特急に出てくるスターフェリーに乗ったり廟街のネオンに目が眩んだり、熱病のような体験の後聴きました。
一曲目のLonesome Streetの歌い出し、「What do you got?」がなんとも気の抜けたメロで強烈なイギリス臭さ。あ〜これこれ!本当にレイデイヴィスに比肩する男にデーモンはなってしまったんや。
New World TowersやThought I Was A Spacemanなんかがブラー以降のデーモンらしい曲で快眠ソングやけど要所要所でグレアムのギターに痺れる瞬間があって、バンドっていいなぁ〜という感じ。
キンクスのPhobiaのように、まだこのバンドにはこんな底力があったんかと新旧のファンを喜ばせた快作です。
Son of Schmilsson / ハリーニルソン
悲痛なまでの悪ふざけと誠実さが同時にパックされたアルバム。これこそロックンロールレコードやと思います。ニルソンのようにズタズタの自己をユーモアまじりにさらけ出して、さらに傷ついていく破滅型ミュージシャンは他にジョンレノンぐらいしか知らない。
アルバムの装丁も凝っていて、Son of 〜というのはホラー映画のタイトルによくある文句。外ジャケ中ジャケともにそれ風に作られている。アルバム冒頭の小芝居もパロディ、エンディングのお別れの挨拶も微笑ましい。
ファッキュー!とキレながら最後にはラビューとすがるYou're Breaking My Heartが痛々しい、Turn on Your RadioにThe Most Beautiful World in the World、The Lottery Songが半ギレのアルバムの中で特別な輝きを放っています。真夜中のカーボーイ、ウィズアウトユーしか知らない人は聴いてみてね!
Electricity by Candlelight / アレックスチルトン
アレックスチルトンの死後発表された蔵出しライブ音源。全曲カバーながら選曲がニクい。みんなが知ってるのはもちろんのこと、コーラスやら合いの手やらで参加しやすい曲が選ばれている。
イパネマの娘での「あ〜」や、素敵じゃないかでの高音の出なさ、歌詞を客に教えてもらってるのも実は全て計算尽くの演出では!?と勘ぐってしまう。それほどこのライブ盤は時間が経つにつれ、観客がアレックスチルトンの人柄にほだされていく過程を克明に捉えている。
ボックストップス時代のダミ声でもビッグスター時代のヒリヒリした声でもないリラックスしたボーカルが全編で聴けます。
個人的にはMotel Bluesで一瞬見せるギラつきがハイライト。
Unfinished Business / ロニースペクター
ロニースペクターのソロ2作目、87年発表。
大仰なシンセにリバーブかかりまくりのドラムと、ブライアンウィルソンのソロに近い音。フィルスペクターの影響下にあるアーティストは80sサウンドと相性いいと思いません?
この時代のアメリカの馬鹿馬鹿しさをがっちり出しつつ、60年代的ポップスセンスも随所に混ぜ込んでくれてる。齢44にして唯一無二のあの声で新曲(どれも傑作!)を歌い上げる彼女を見た60年代からのファンはどんな気持ちやったでしょうか。こんなにファンでいて良かった!と思わせてくれる歌手いますか!?
Eストリートバンド?なサックス、ホーンの代用として鳴るギターのコードバッキング、深いリバーブのかかったドラムはロネッツでしてきたアレンジの方法論を80s解釈したもの。ロネッツが与えた後進への影響をキチンと踏まえて「こういうことだよ」と提示してみせる仕掛けにも注目すべき。いったいこの最高のアルバムは誰の手によって世に送り出されたのでしょうか。アレンジャー、プロデューサーに詳しい人、ぜひ教えてください。
Blast of Silence / ゴールデンパロミノス
アヴァンギャルド系のドラマー、アントンフィアが中心のメンバーが流動的に変わるバンド。というのが必ず注釈に入ってくるバンドです。
1作目はジョンゾーン、ジョニーロットン、ジャックブルースなんかが参加してたそうですが未聴です。
本作はその辺の肩書きから想像してたのと違う、ビシバシとリズムの立ったアントンフィアのドラムが核になってる歌モノアルバムです。
特にシドストローがボーカルをとったAngelsとDiamondが素晴らしい。ホーンこそないもののもろスタックス風な楽曲で竹を割ったようなドラムが映えること。
人脈や制作の経緯など置いといてポップスの名盤として楽しめます。